緑地科学セミナー第10回                         
日時:6月28日(木)16時10分〜17時40分
場所:D112教室
タイトル:「土地利用履歴が生物群集に与える影響と人口減少時代の生物多様性評価」
演者:深澤 圭太 博士(国立環境研究所生物・生態系環境研究センター 主任研究員)
太古の昔から,人間は土地や自然資源を利用し,大きく改変しながら歴史を歩んできました.そして今,有史以来の人口減少時代を迎え,土地利用の停止が生物多様性の危機としてクローズアップされるようになっています.そのような社会環境の変化に対応した国土計画や生物多様性保全策のありかたを検討することは,これからを生きる私達にとっての大きな課題となります.現在の生物多様性を成り立たせている歴史的背景を理解することは,歴史性を反映した保全策や土地利用のありかたを考えることにとどまらず,自然環境の復元の目標設定や実現可能性の評価といった具体的な問題解決に役立つ知識を得ることにつながります.本セミナーでは,土地利用の歴史が生物多様性のパターンに与えた影響の研究や,過去に放棄された無人化集落(廃村)における土地放棄後の生物相長期変化予測の研究をされている国立環境研究所の深澤圭太さんに講演をしていただきます.


緑地科学セミナー第9回                         
日時:5月24日(木)16時10分〜
場所:D112教室
タイトル:「The Rise of the Drones: The Role of Automation for 21st Century Bio-geomorphometry in Japan and New Zealand」
演者: Christopher Gomez氏 ニュージーランド カンタベリー大学
ニュージーランド カンタベリー大学 地理学部 准教授であるChristopher Gomezさんは、地形学が専門の方で、最近注目されております無人航空機(ドローン)を使い、広域の地形を3次元で把握する手法を開発したり、地中レーダーを使い、地中内構造物を把握する研究を行っております。セミナーでは身近に利用できるようになった最新の技術をご紹介していただこうと思っておりますので、皆様奮ってご参加いただければと思います。


緑地科学セミナー第8回                         
日時:2月4日(木)16時10分〜
場所:E棟102講義室
タイトル:測定点の配置と減らし方(気象測定ネットワークの最適化)
演者:本條 毅 教授
さまざまな分野の観測で、測定点をどう配置するかは重要な問題です。今回のセミナーでは,ヒートアイランド観測の測定点を,どの程度減らせるかについて分析した結果を発表します。サバティカル研修のときに行った研究なので,滞在先のヨーテボリ大学やレディング大学での体験も含めて,専門外の方にもわかりやすくお話したいと思います。


緑地科学セミナー第7回                         
日時:12月3日(木)9時50分〜12時
場所:百周年記念戸定ヶ丘ホール
タイトル:Lidar Tools and Techniques for 3D Vegetation Structure Characterization
演者:Dr. Andrew Hudak (USDA Forest Services)

Vegetation structure is complex and varies at multiple scales. The most obvious scale of structural variation in forests is at the individual tree level, but management activities and other disturbances also impose a larger scale of patch-level variation at the stand level. In non-forest systems the same factors exist, although at typically finer spatial scales of variation, such that shrubs may be the largest and most dominant vegetation form. Current technologies for 3D characterization provide the means with which to explore what vegetation structure means for productivity, wildlife habitat, fuel/fire dynamics, etc. The effect of fine-scale fuel structure on fire behavior is an especially tightly coupled process at fine scales. The derivation of 3D fuel maps at nested spatial scales is the objective of this research. Structure for Motion (SfM) point clouds derived from digital stereo photographs are also useful and more economical to collect than lidar, and may provide an important means to “bridge the scaling” gap between airborne and terrestrial lidar point clouds, such that canopy structure is well characterized at multiple spatial scales upon fusion of the different point cloud datasets. More research is required to determine the optimal scales to characterize vegetation structure in different vegetation types and for different fire (and other) modeling applications.


緑地科学セミナー第6回                         
日時:11月19日(木)17時〜17時45分
場所:百周年記念戸定ヶ丘ホール
タイトル:「極東ロシア シホテ−アリニ山脈南部ビソカヤ山での野外調査?ローテクノロジー・フィールドワークを極める−ペレストロイカ直後、1992年の行動記録」
演者:沖津 進(千葉大学大学院園芸学研究科)

沖津先生は、今春以来病気療養中でしたが、これまで長年にわたって取り組んでこられた植物の分布地理の研究について、特別に御講演いただけることになりました。大変貴重な機会ですので、幅広い皆さまの御参加を心よりお待ち申し上げます。
・シホテ―アリニ山脈ってどこ?
・なぜシホテ―アリニ?
・ロシア極東地理探検小史?アルセーニエフの功績?
・植生調査の実際:調査ルートに沿っての行動と植生景観の紹介
・ローテクノロジー・フィールドワークの醍醐味と留意点


緑地科学セミナー第5回                         
日時:7月29日(水)16時〜
場所:E棟102講義室
タイトル:「宮古島地下ダム水質長期変動について」
演者:唐 常源 教授

宮古島は、年平均気温 23.6°C、年平均降水量が2,0210mmに達する。しかし、降雨の年内配分が均等でないため、過去、降水量が少ない時には農作物に干ばつの被害がしばしば発生していた。その問題を解決するために、昭和62年度から平成12年度にかけて地下ダムの築造、灌漑施設の整備などが行われた。地下ダムは,島の利水事業であり、地上ダムと異なり,水を貯留するために陸水没させない,災害を被る危険がない等の長所を持つ。一方、地上部の人間活動は地下ダムの水質に与える影響が懸念される。
そこで、地下ダム完成から昨年度まで地下ダム流域における地下水質の分析結果をまとめ、水質の長期変動を考察したうえ、水環境に与える農業活動の影響、地下ダム利用の現状および問題点を議論し、島の水利用と環境保全の将来像を展望する。


緑地科学セミナー第4回                         
日時:5月16日(土)14時〜17時30分
場所:千葉大学園芸学部百周年記念ホール
タイトル:「福島の里山生態系における放射性物質の動態」
スケジュール
14:00〜14:05 趣旨説明 小林達明(千葉大学大学院園芸学研究科)
14:05〜15:00 話題提供1「原発事故から4年間の森林内の放射性セシウム移行状況と分布変化」
       演者:加藤弘亮(筑波大学アイソトープ環境動態研究センター)
要旨:平成23年3月の東京電力福島第一原子力発電所の事故により放出された放射性 核種(主に放射性セシウムやヨウ素131)は、汚染雲となって大気中を移動・拡 散し、福島県およびその近県の広範囲に沈着した。放射性核種の沈着の影響を受 けた面積のおよそ70%が森林となっており、森林における汚染物質の挙動を明ら かにすることは、原発事故の環境影響と被ばく線量を評価するために不可欠である。
 森林に沈着した放射性セシウムは、樹冠に一時的にトラップされた後、時間経 過とともに徐々に林床に移行する。原発事故等では、初期沈着から数年間は、雨 水によるリーチングや落葉等による樹冠から林床への物理的な移行が森林環境中 の放射性セシウムの挙動を理解する上で重要なプロセスである。そこで、原発事 故により放射性セシウムの沈着を受けた、福島県伊達郡山木屋地区のスギ林(31 年生、18年生)およびコナラ−アカマツ混交林を調査対象として、原発事故直後 からおよそ4年間にわたり森林内での放射性セシウムの移行状況と分布変化のモ ニタリングを実施した。本セミナーでは、詳細なモニタリングデータに基づい て、我が国の森林における放射性セシウムの初期遮断と二次沈着による林床の蓄 積量の時間変化傾向について紹介する。

15:00〜15:55 話題提供2「里山ナラ?マツ林生態系における放射性物質の挙動の特徴とリター除去処理の影響」
       演者:山本理恵(元千葉大学大学院園芸学研究科)
要旨:北部阿武隈山域では、原発事故以前、広く里山を生かした循環的な暮らしが営まれてきた。そのような里山が放射性物質に汚染されたが、里山の暮らしの回復のためには、生態系にコンタミした放射性セシウムの挙動を知り、その将来を予測し、適切な対策が立てられることが望ましい。ここでは、里山生態系循環の柱となるナラ類−アカマツ混交二次林の放射性セシウム循環と外部流出について、2年間の測定で得られた結果を報告する。リター除去処理を行った林分と対照区林分の分析結果から、主木であるナラ類による経根吸収はすでに始まっていることがわかった。一方、地表に存在する放射性セシウムの年1%に相当する量が林内雨や落葉として林地へ還元されており、林外へ流出した量は年0.01%と少なかった。報告では、物質循環に関する既往の文献とも比較検討しながら、森林生態系における放射性セシウムの挙動の特徴について検討し、リター除去処理などの対策が及ぼす効果について考える。

15:55〜16:00 休憩

16:00〜17:30 総合討論
       コメンテーター:高橋輝昌(千葉大学大学院園芸学研究科)
               村上正志(千葉大学大学院理学研究科)


緑地科学セミナー第3回                         

日時:4月21日(火)16時10分〜
場所:307講義室
タイトル:「系統地理学的手法によって推定されたミツバツツジ節(ツツジ科ツツジ属)の進化と多様化」
演者:渡辺洋一(千葉大学 大学院園芸学研究科)

大陸島は、海洋によって大陸と地理的に隔てられているが、過去に何度か大陸と地理的に繋がった歴史を有する地域である。特に、海面変動を伴った第四紀の気候変動は、島と大陸の地理的な連続性を変化させ、海面が低下した氷期には大陸と大陸島は地理的に繋がることで多くの生物種が大陸から島へ移入してきた(Harrison et al., 2001)。そして、その後の大陸と大陸島の隔離により、いくつかの種は異所的な過程によって異なる種へ分化したと考えられている(e.g. Bittkau and Comes, 2005)。大陸島である日本列島の植物相はこのような過程により創り出されたと考えられ、大陸島における植物集団の歴史を理解することは森林保全を考える上で重要な知識となる。特に、いくつかの分類群(属・亜属・節)は日本列島で特徴的に多様化しており、このような分類群は希少種・絶滅危惧種を含むため、個別の種の保全だけでなく分類群全体の進化過程を理解することが必要だと考えられる。  ミツバツツジ節は、大陸に3種、日本列島に17種が認識されており、日本列島で多様化した代表的な分類群である。そこで、希少種・絶滅危惧種が多いツツジ属ミツバツツジ節を対象に進化の過程を明らかにし、日本における進化・多様化の過程や要因を集団遺伝学的なアプローチにより明らかにした。また、個別の種に着目することで、種内の集団の歴史やその種間差がどのように異所的な種分化や多様化につながるのかを明らかにした。ミツバツツジ節全体の進化過程を明らかにするために、全20種を網羅するように、東アジア全体から74集団444個体を採取し解析を行った(図1)。葉緑体遺伝子座の塩基配列(3,971 bp)や核エクソン5遺伝子座の塩基配列(2,002 bp)をはじめとしてさまざまな遺伝解析を行い、種間の進化史や系統関係を明らかにした。さらに、種内や種間の遺伝的変異を詳細に比較することで、保全に資する多くの結果を明らかにした。発表では、その一部を紹介する。

緑地科学セミナー第2回                         

日時:12月4日(木)16時10分〜
場所:千葉大学園芸学部205講義室
タイトル:「房総半島南部モミ・ツガ林の更新と成長:過去の記録と年輪データが物語ること」
演者:梅木 清

房総半島南部には,林冠層で優占するモミとツガが常緑広葉樹と混交する自然度の高い森林が存在する。これまで,このタイプの森林の発達の履歴は構成樹種の種特性やこの地方の森林撹乱体制などから論じられてきた。しかし,成長錐で年輪を採取し,樹木の更新年や成長特性を調べたところ,樹木の更新は過去の撹乱・強風の記録とは対応せず,過去の小径木の成長速度は現在のものと比べて大きいことがわかった。これらの特徴は,この森林が中林(構造材と薪炭の生産を平行して行う森林)として管理されてきたという森林管理の記録と符合する。この結果は,自然度が高く高蓄積の森林を安易に原生的であると認識してしまうことに対するいましめとなっている。発表では、データ解析に用いた階層ベイズの手法紹介を合わせて行う。


緑地科学セミナー第1回                         

日時:9月17日(水) 13:00 〜15:00
場所:千葉大学園芸学部百周年記念会館
タイトル:「緑地環境における3次元データの活用」
演者:L.Monika Moskal (University of Washington), 加藤 顕(千葉大学)

都市林での生態系サービスが重要視されるようになっているが、その機能や価値を十分に把握できていなかった。しかし、近年レーザーリモートセンシングによる3次元データ解析が進展し、3次元データを用いて正確に定量化できるようになってきた。本セミナーではワシントン大学での3次元データを活用した先行研究を紹介し、日本でも最近注目されるようになった地上レーザーを用いた研究紹介を行う。さらに、講演会の後、3次元データを簡単に扱えるFusionソフトを用いたワークショップを開催する。
講義のお知らせ[PDF]
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